2025/06/21 12:39

🐾 犬の“食べムラ”を科学する

6ヶ月から始まる変化の正体とは?


「急にフードを食べなくなった…」
「好きだったはずのごはんを残すようになった…」

そんな “食べムラ” に、戸惑ったことはありませんか?

私の印象では、
生後6ヶ月~1歳半ごろに食べムラが始まる子が多いように感じています。

でもこれは、わがままではなく、
身体や脳の変化・飼い主さんとの関係性が関係していることも。

今回はその理由を、行動学や神経生理学の視点から解説します。


🧬 ホルモンの変化と脳の発達

6ヶ月を過ぎた頃から、
犬は性ホルモン(エストロゲンやテストステロン)が活発になります。

  • 雌犬は初回発情でエストロゲンが増加 → 一時的に食欲が減退

  • 雄犬はテストステロンの影響で探索や他犬への関心が上昇 → 食事どころじゃない!

また、この時期は
脳の前頭前皮質(行動制御や意思決定)も未成熟。

つまり、
食欲より「他に気になるもの」が勝ってしまうのも自然な反応なのです。


🍖 食欲が薄れる“飽食環境”

現代の犬たちは、
「決まった時間に、毎日必ずごはんが出てくる」環境で暮らしています。

それはとても安心できることですが、
同時に“飢え”に対する本能的な意識が薄れてしまうことも。

しかも…


🧠 “食べないこと”がご褒美になっている?

つい私たちは…

  • 食べない → フードを変える

  • 食べない → 手で食べさせる

  • 食べない → 心配して声をかける

でも、これらの行動は
「食べないと、もっと良いことがある」と犬に学習させてしまっているかも!

これは心理学でいう
オペラント条件づけ(B.F.スキナー)の例です。

犬にとっては、
「食べない = ごほうびをもらえる」
そんな“無意識の学習”が始まっている可能性があります。


💡 犬は飼い主をよく見ている

犬はとても賢い動物。
飼い主の反応を読み取り、最も“効果的な方法”を選ぶようになります。

つまり…

構ってもらえる → 食べないことが習慣化
というパターンも起こり得るのです。


✅ 結論:一過性の変化だからこそ、慌てずに

生後6ヶ月〜1歳半の食べムラは、

✔ ホルモンの影響
✔ 脳の発達段階
✔ 環境の慣れ
✔ 飼い主の対応の影響

これらが重なって起きる自然な現象であることが多いです。

だからこそ、
“食べなかったらどうしよう…”と焦るより、
一貫したルールある食事習慣を整えていくことが大切です。


🏠 対処法に迷ったら…

具体的なフード選びや接し方は、
店頭 sniff-sniff にて、個別にご相談いただけます。

犬種や性格に応じて、
行動学や栄養学の視点からアドバイスいたします。
お気軽にご来店ください🐾


※この記事は、健康な犬を対象とした一般的な情報提供を目的としており、
特定の病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。
ご心配な症状がある場合は、必ず獣医師にご相談ください。


📚 参考文献

  • Houpt, K.A. (2007). Domestic Animal Behavior

  • Overall, K.L. (2013). Clinical Behavioral Medicine for Dogs and Cats

  • Lindsay, S.R. (2000). Handbook of Applied Dog Behavior and Training

  • McGreevy & Boakes (2007). Carrots and Sticks